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かぼちゃの馬車事件

不動産事情

久賀田 康太

筆者 久賀田 康太

不動産キャリア10年

学生時代はサッカーに打ち込みました。現在はゴルフです。
いかに練習に行かずに平均スコアを80台前半に落ち着くよう、
イメージトレーニングを中心に頑張っています。

かぼちゃの馬車とは、株式会社スマートデイズ(2021年5月消滅)が展開していた
「女性専用シェアハウス」のブランド名です。

上京する女性単身者がターゲット


このかぼちゃの馬車は「上京する女性単身者」とターゲットを明確にしたシェアハウスで、
家賃は管理費込で4万円程度、
「敷金・礼金・仲介手数料なし」と初期費用を抑えた物件で、
「トランクひとつで即入居」とうたっていました。
この条件だと、入居者も居そうですし、条件の良い投資物件に聞こえますよね。
さらに、「かぼちゃの馬車」はスマートデイズによる「サブリース契約」になっていました。

サブリースとは?


サブリースとは、「会社が物件を一括で借り上げをして、部屋の稼働率(入居率)に関わらず、毎月同じ料金(サブリース料)を投資家に支払う」契約です。
サブリース会社は利益を上げる必要がありますから、
このサブリース料というのは借り上げ賃料から管理費などの諸経費も引いて利益が出るように、
低く設定されるのが一般的です。
ですが、スマートデイズはサブリースとしてはかなりの高利回りである8%の賃料収入、賃料30年保証を売りにしていました。
このことから、もし入居者がいなくても収入が見込めるだろうと投資初心者の安心材料となっていました。
だが、このかぼちゃの馬車によって、
多くの投資家が多額の負債を抱えたり、
もっとひどい場合は自己破産に追い込まれてしまいます。
ではなぜ、「かぼちゃの馬車」は失敗してしまったのでしょうか?

不動産投資には様々な業者や銀行が関わってきます。
知識のないままに不動産投資を始めてしまうと、
業者の言いなりになってしまい損をしてしまうこともあり得ます。
この事件では、悪事を働いた業者が非難されるべきなのはもちろんですが、
投資家が言われるままになんでも鵜呑みにしてしまうのは危険だということも同時に認識されました。
これから紹介する事件のからくりを読めば、騙されないよう注意するべきポイントが理解できます。

かぼちゃの馬車事件はなぜ起きたのか?


じつは、スマートデイズのサブリースは【赤字前提】の事業として行っていました。
スマートデイズはキックバックが主な利益になっていたのです。
「キックバック」は現在、政治の世界においても話題です。
このキックバックが、かぼちゃの馬車事件はすごかったようです。
コンサル料として、50%のキックバックがあったようです。
例えば、5,000万円の施工費を受注すれば、
50%の2,500万円のお金が営業マンに支払われていたようです。

本来ならこのサブリース事業で収益を得るのがサブリース会社ですが、
じつはこのサブリース事業は全くの赤字経営でした。
この赤字事業を成り立たせていたことが、
かぼちゃの馬車事件の大きな原因となりました。

というのも、じつは「かぼちゃの馬車」は面積の割に家賃相場が高く、
しかもシェアハウスというプライベートが確保されにくい物件であったため、
入居を希望する人はかなり限られていました。
そのため空室が多く、実際の入居率は40%程度でした。
これだけでは当然ながらサブリース料を投資家に払えません。
サブリース料を投資家に支払うためにはキックバック料が必要、
そのためには新たな投資家を開拓して建売をし続けなければなりませんでした。

キックバック


ではこの収入源となっていたキックバックとはいったいどういうものなのでしょうか?
そもそも、「かぼちゃの馬車」は全て建売をしており、
それをスマートデイズが一括で借り上げて、投資家にサブリース料を支払う形態になっていました。
そのため、かぼちゃの馬車を購入するには、まずは建築する必要があります。
ここでこの事件の要因になる【法外なキックバック】が行われていました。

キックバックは通常は2~3%程度ですが、
スマートデイズはなんと50%のキックバックを得ていました。
そうなると建築会社はキックバック料を払うために相場よりも高く値段を設定し投資家に買ってもらわなければなりません。

文字にして考えてみれば、「そんなことできるの?」と思いますが、
実際投資家の大半の方は、不動産の本当の価値を自分自身で調べず、
不動産会社の話で「利回り」「総額」で判断されます。
不動産会社はとにかく何でも買ってもわえれば利益になりますので、
本当のことは言わない会社が多いです。
例えば本来なら5000万円で売るような物件を、
建築会社はキックバック料を払うために1億円に設定して、
5000万円で建てて、5000万円をスマートデイズに支払っていました。
当然投資家はその分多額の負債を負って購入することになります。

スマートデイズの経営を支えていたのがサブリース事業ではなくキックバックだったこと、
それによって投資家に経済的な負担を強いていることが、問題を大きくしました。

不正な融資(スルガ銀行)


極めつけとなってしまったのが【不正な融資】です。
融資では本来、投資家の資産状況を鑑みて融資が出せるかを決めます。
ですが、この融資を請け負っていたスルガ銀行は、
スマートデイズが行っていた資産状況の改ざんを黙認し、
実際の資産状況に見合っていなくても融資を下ろし、
3.5~4.5%という高金利ローンを投資家に組ませていました。
これは銀行がローン審査を怠っていると言えます。
ここで投資家への販売が阻止できた可能性も十分にあったのです。
つまり、銀行が融資状況をしっかり審査すれば、この事件は防げたともいえるのです。

以上より、スマートデイズの売り文句を信じた投資家たちは、
資産状況に見合わないローン組み、実際の価値以上の高価格なかぼちゃの馬車の購入してしまいました。

かぼちゃの馬車事件の末路


この事件はどのような結末を招いたかというと、
スマートデイズの破産と、多くの投資家への多額な負債、あるいは自己破産でした。
事件は新規顧客が獲得できなくなるところからほころび始めました。

スルガ銀行は新規顧客への融資を打ち切りました。
なぜなら、かぼちゃの馬車の投資家のローンの返済が滞っていたからです。
投資家はローンを組まないと「かぼちゃの馬車」を購入できません。
つまり、ローンの打ち切りは投資家の開拓が出来なくなることを意味しました。
そうすると建売が出来なくなるので、スマートデイズは主な収益であったキックバック料が得られなくなっていきました。
投資家は安定した収入だったはずのサブリース料がスマートデイズから払われなくなり、
ローンの返済が難しくなります。

この悪循環から、とうとうスマートデイズは破産し、投資家には負債だけが残りました。

投資家のそのあと


ですが、これではプロである業者に騙された投資家たちの被害は甚大です。
そこで2019年にオーナーたちの依頼によって被害弁護団が結成され、
東京地裁にスルガ銀行に解決を求める調停を申し立てました。
そして翌年2020年にスルガ銀行と被害弁護団は、
「オーナーが「かぼちゃの馬車」の土地と建物を手放せば、ローンの借金を帳消しにする」という内容で合意しました。
結果、スルガ銀行が負担する賠償金の総額は440億円になりましたが、
それだけこの事件が悪質だったと言えます。
その後のスルガ銀行は業務停止などを経て、
審査をより厳しくするなど再生への道をたどっています。

まとめ


かぼちゃの馬車事件を見てきましたが、不動産を購入する場合、
居住用はともかく、収益用マンションを購入する場合には、
安易にその売主事業者に問い合わせする前に、
弊社のような第三者的な不動産会社に相談することも一つの選択肢かと思います。
しかし最終的には「自分の責任」になりますので、よくよく考えて、調べて動くようにしてください。


この記事の執筆者

このブログの担当者  久賀田 康太

保有資格:宅地建物取引士

1985年生まれ。

大阪府守口市出身。

関西大学法学部法律学科卒業。

住友不動産販売株式会社にて土地、中古戸建、新築戸建、一棟収益物件、工場、田畑等の売買仲介業務にて実務経験を積む。

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