不動産取引での「履行の着手」っていつ??
目次:【「履行の着手」とは??】
「履行の着手」とは??
この言葉は、他の不動産会社の社長からも質問があったりします。
ここで「履行の着手」について、参考になればと思い、まとめます。
着手の意義
不動産を契約する場合、「手付金」というものがあります。
このことは別途記載しますが、
「解約手付」の交付があった場合であっても、
相手方が契約の履行に着手した場合は、
手付解除はできない(民法557条1項但し書き)、とあります。
履行の着手の意義について裁判例では、「債務の内容たる給付の実行に着手すること、すなわち、客観的に外部から認識し得るような形で履行行為の一部をなし、または履行の提供をするために欠くことのできない前提行為をした場合を指す」としています。(最高裁判例昭和40年11月24日の判旨)
また、別の裁判例では、「債務に履行期の約定がある場合であっても、当事者が、債務の履行前には着手しない旨合意している場合等格別の事情の無い限り、ただち、右履行前には、民法557条1項にいう履行の着手は生じえないと解すべきものではない。」とし、特段の合意が無い限り、履行期前であっても、履行の着手は認められるとしています(最高裁判例昭和41年1月21日の判例)。
以下、具体例を見ていきましょう。
・買主が手付を除く残代金をいつでも支払える状態にしていれば、現実に残代金を支払っていなくとも、履行の着手が認められる(最高裁判例昭和26年11月15日)
・しかし、履行期まで1年以上ある場合は、履行の着手があったとは認められない。
・売主が金融機関の借入金を返済し、不動産上の抵当権を消滅させて行為につき、不動産の完全な所有権を移転させるという売主の義務を履行するために必要不可欠な行為であり、履行期日のわずか16日前に行われていることも加味し、履行の着手を認めている(東京地裁平成21年11月12日判例)
・売主が買主への引渡しのために、土地を「分筆」した行為は、履行に着手にあたる(東京地裁平成21年7月10日判例)等、
その取引の、あらゆる状況を勘案した上、裁判所は「履行の着手」があったかどうか判断しています。
履行の着手の認識においては、個別具体的に検討していく必要があるかと思います。