リースバック名目の詐欺行為

不動産事情

目次:【リースバック取引に係る一連の行為が詐欺行為にあたるとして、損害賠償が認められた裁判例】  

リースバック取引に係る一連の行為が詐欺行為にあたるとして、

損害賠償が認められた裁判例


自宅(マンションの一室)購入時のローンが残っており、
管理費の滞納による自宅の差押えを受けていた売主が、
債務返済のため、コンサルタント会社に
不動産担保ローン(自宅を担保にお金を借りる行為)の申し込みをしたところ、
融資であると偽って、相場より著しく安い価格で、
リースバックによる自宅の売買契約をさせられたことは、
詐欺行為であるとして、
売主が、取引に関わったコンサルティング会社、宅建業者、
およびその代表者、従業員等に対して、損害賠償を請求し、
転売利益金額相当が損害額として認容された事例
(東京地裁 令和4年2月28日判決 )

1 事案の概要


X(原告)は、マンションの一室(本件不動産)を所有していたが、
金融機関からの借入債務があり、
また、マンション管理費の滞納による競売開始決定に基づき、
本件不動産の差押えを受けていた。
Xは、Y社(被告、コンサルタント会社)から、
競売中の物件等を対象に不動産担保ローンをするという案内の郵便はがきを受領し、
Y社に不動産担保ローンの申込みをした。
平成28年9月、Xは、Y社では融資できないと言われ、
Y2社(被告、宅建業者)の事務所に案内され、
Y社およびY2社担当者らに、
債務を清算した上で手元に100万円程度の資金を残すには、
融資額を500万円にするのが良いと説明され、
言われるがままに、本件不動産の売却希望価格を
500万円とする「不動産売却申込書」および、
Xが本件不動産をY2社に対して代金500万円で売却する旨の
「区分所有建物売買契約書」に署名押印した。
同年10月に、Xは、Y2社担当者に呼び出され、
Y2社との売買契約を合意解除する旨の解除証書、
Y3社(被告、宅建業者)に対して代金500万円で
本件不動産を売却する旨の売買契約書、
同社から、賃料を月額10万円、期間を3か月間、
期間満了後は契約を更新しないなどと定める
定期住宅賃貸借契約書に、署名ないし押印させられた。
(その後、普通賃貸借契約に変更された。)
また、同日、Y3社は、Xに対し、
売買代金から固定資産税等や賃貸借契約に係る敷金・礼金等を控除した金額を支払い、
Xは、借入金、滞納管理費等を精算したが、
手元には10万程度しか残らなかった。
本件不動産はその後、Y3社から他業者に、1250万円で売却され、
更に第三者に1980万円で転売された。
Xは、Yらは、共謀して、競売手続により
本件不動産の所有権を失う危機に直面したXをだまして、
市場価格よりも著しく低廉な価格で本件不動産を取得し、
これを第三者に転売して利益を得る詐欺行為を行ったとして、
共同不法行為による損害賠償請求訴訟を提起した。

2 判決の要旨


裁判所は、次のように判示し、Xの請求について、認容した。

⑴ Yらの詐欺行為の有無
Y社は、Xに対し、本件不動産を担保にして融資を行う意思がないのに、
不動産担保ローンを勧誘し、
Xを、Y社から借入れをすれば、
本件不動産の所有権を失わずに済むと誤信させ、
このことが、Xを、本件不動産のリースバックへと誘導したといえる。
Yらは、Xに対し、リースバックを提案したところ、
Xがこれに応じた旨主張するが、Xにとって、
半年程度のリースバックは望んでいた内容ではないことが明らかであり、
Xが上記のような提案にたやすく応じたとは考えにくい。
また、本件不動産の売買代金を500万円と合意した理由として、
同不動産と同一建物内にある物件の売買代金事例が800万円であり、
本件不動産は経年劣化により室内のリフォームに相当額の費用を要するので、
本件売却価格が市場価格よりも著しく低廉であったとはいえない旨主張するが、
本件不動産は、引き続き原告が居住し、室内のリフォームは行われないまま、
後に1250万円で売却され、更に1980万円で転売されていることから、
上記Yらの主張はただちに採用し難く、
本件不動産の売買代金額(500万円)は、著しく低廉なものであったと認められる。
その他の事情も鑑みて、Yらは、
Xから本件不動産を市場価格よりも著しく低廉な価格で取得し、
これを転売して利益を得るとの企図の下、
順次Xに働きかけ、本件不動産につき、リースバックを締結させるという、
Xの望む内容とはかけ離れた方向に誘導し、
同不動産を騙し取ったと認めることができる。
したがって、Yらは、それぞれ詐欺行為の
重要な部分に関与し、その実現に不可欠な役割を担っていたというべきであり、
共同不法行為が成立する。Y社、Y2社、Y3社は、
代表者の行為についての損害賠償責任(会社法350条)、
担当者の行為について、使用者責任(民法715条)を負う。

⑵ Xの損害額について
本件不動産と同一マンション内の他物件
(専有部分の建物の床面積40.05㎡)の評価額が1768万円であった。
これを本件不動産の床面積29.10㎡に換算すると、
約1284万円であり、被告Y3の他業者に対する
売買代金額である1250万円に近似するといえるため、
本件不動産の価格相当額を1250万円と認める。
Xの損額額として、上記1250万円と
売買代金として既に受領した金額との差額約768万円と弁護士費用として、
その1割相当の約76万円を認める。
よって、Yらに、連帯して約844万円等の支払を求める限度で理由があるから認容する。

3 まとめ


上記事案では、詐欺行為と認められた場合ですが、
善意無過失の第三者の登場により自宅の売買契約は白紙にできなかったようですので、
損害賠償を受け取れることはできたようですが、
大事な自宅は手放すことになってしまったようです。
(詳細はわかりませんが…)
弊社では、弁護士の先生より、
任意売却の案件のお話をいただくことがあります。
所有者様がお亡くなりになるまで自宅に住み続け、
お亡くなりになるまでは自宅に対して金融機関等から融資を受け、
お亡くなりになったタイミングで、
債務を清算するために売却活動の依頼を受けるケースです。
今後は超高齢化社会が進みますので、
このようなケースが増えると予想されます。
そこに付け入る悪徳業者も増えてくると思います。
不動産業界においては、取引価格が一般の商材より高く、
また、業者と消費者との間の情報の非対称性にもと、
これは正しいのか、これは間違っているのかという判断が難しいことが多いです。
インターネットの普及により、昔より情報を入手しやすくなったとは言え、
まだまだ閉鎖的な業界です。
人口減少、高齢化社会が進んでいる日本において、
リースバックや不動産証券化等、
今後はより難解・複雑な営業手法が出てくるかと思います。
弊社は情報の透明性の確保、
売り急ぎ・買い進み等の特殊な事情が
発生しないことを心掛け、
安心安全な取引に努めてまいります。
些細なことでも構いませんので、
「おかしいな?」と思われた際は、
ご用命いただけましたら幸いです。
弊社提携弁護士等と一緒にご検討させていただきます。

この記事の執筆者

このブログの担当者  

久賀田 康太


保有資格:宅地建物取引士

1985年生まれ。

大阪府守口市出身。

関西大学法学部法律学科卒業。

住友不動産販売株式会社にて

土地、中古戸建、新築戸建、

一棟収益物件、工場、田畑等の

売買仲介業務にて実務経験を積む。

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